「競輪のルールって?」
「ラインやジャンって何?」
「競輪の細かい知識を全部教えてほしい!」
という方のために、競輪の基本的な流れやルールを解説します。
スポーツ観戦と同じで、簡単なレースの流れやルールが分かっていないと、競輪も何が起こっているのか分からず楽しめません。
しかも、競輪には、競馬や競艇とは違った特徴があります。
この記事では、競輪について全く知らない人が、レース観戦を楽しめるようになるために基礎知識をまとめました。


この記事の目次
そもそも競輪とは?
「競輪」とは、選手が自転車に乗ってレースをする競技で、競馬や競艇と同じ公営ギャンブルの1つです。
レースは6~9名で行われ、「バンク(競走路)」と呼ばれるコースを規程の回数周回したらゴールとなります。
私たち観戦者は、ゴールする着順を予想して「車券」を購入することで、的中したときに「払戻金」を受け取ることができます。

ただし、競輪では個人スキルが高い選手が1着になるとは限りません。
競艇や競馬は個人戦なので強い選手が1着になるという分かりやすいレース展開になりますが、競輪の場合は違います。
競輪では、「レース序盤〜中盤はチーム戦(ラインの戦い)」と「レース終盤は個人戦」というゲーム展開になっているので、チーム力(ラインの力)と個人力を両方考えて予想しなければいけません。

ズルとかありそうで怖いな。
そこについても解説しておこう

競輪で八百長はおきる?
結論から言うと「八百長はない」と考えてOKです。
中盤でラインを組んでチーム戦を行うといっても、それは全員が1着を目指すための「一時的な協力関係」です。
ゴールまで協力してヤラセのレース展開になることはなく、最後は全選手が自分のゴール着順をあげるために必死で走ります。
このように健全なレース展開になるよう、競輪選手のお給料(賞金)も着順が高いほど高くなり、着順が低いほど安くなります。

一番大きなレースのGP(グランプリ)では、「1着賞金:1億円」「2着賞金:1200万円」「3着賞金:800万円」…「9着賞金:500万円」というように、同じレースに出ても着順で20倍も給料が違うんです。
GP以外でも同じように1着ほど給料が大きくなっているので、選手たちはヤラセをすると損してしまい、結果として全員が本気を出すことになります。
それに、選手たちはレース期間中は携帯を持つことも許されず、外部と連絡がとれないようになっています。
このように、給料に差をつけたり外部連絡を禁止したりすることで、選手がレースに集中できる環境を作っているのです。

競輪はいつ、どこで開催されている?
競輪のレースは全国43カ所の競輪場で、1つの競輪場につき年間で約70日開催されています。
1回の開催期間は3日間で、初日に予選、2日目に準決勝、3日目に決勝が行われます。
毎日どこかの競輪場でレースが開催されるように開催期間が調整されているので、平日休日関係なく遊ぶことができますよ。

とはいえ、当サイト「競輪兄弟」では、初心者の方には競輪場で実際にレースを見ながら予想スキルをあげてもらうことをおすすめしています。
なので、
- 初心者のうちは競輪場に行って、目の前で行われる生のレースの予想をする。
- 慣れてきたら、場外車券場やネット投票も活用して、遠くで行われているレースも毎日楽しめる
というように、「目の前のレースでしっかり学ぶ」→「遠くのレースにもどんどん参加する」の2段階で楽しんでほしいと考えています。

レーサーの2つの意味
競輪では、選手が乗っている自転車のことを「レーサー」と呼びます。
しかし、選手のことを「レーサー」と呼ぶこともあるので、少しややこしいですね。
当サイト「競輪兄弟」では、分かりやすく解説するために、選手のことは「選手」、自転車のことは「レーサー」と呼びます。
レーサーは選手ごとにオーダーメイドで作られていて、毎回のレースで選手が自分のレーサーを使うというのが競輪の特徴です。

例えば、競馬ではレース毎に選手が乗る馬は変わりますし、競艇でもレース毎に選手が乗るボートが変わります。
そのため、実力ある選手でも馬やボートがイマイチだったら順位が悪くなりますし、逆に実力不足の選手でも馬やボートがよければ順位が良くなることがあります。
これに比べて、競輪では選手がいつも同じマイレーサーを使うので、単純に「強い選手は1着をとりやすい」という感じでレース展開も予想しやすくなります。
スピード調整は、選手がペダルをこぐ力で行うんだよ。

ラインの重要性
「ライン」とは、選手がレース中に一時的に組むチームのようなもので、同じ地区(あるいは隣接地区)の選手同士で組まれることが多いです。
例えば、東京の選手と栃木の選手が組んだラインは「関東ライン」と呼ばれます。
ラインは2~3人で組まれ、レースの中盤まではラインが縦一列になって進みます。
先頭の選手、2番目の選手、3番目の選手のそれぞれの役割を下の表にまとめました。
順番 | 呼び方 | 脚質 | 戦略 | 戦略の詳細 |
---|---|---|---|---|
1人目 | 自力 | 逃 | 先行/捲り(自力) | 番手選手を空気抵抗から守る。 |
2人目 | 番手 | 追 | 追込み(他力) | 自力選手を後方の選手から守る。 |
3人目 | 三番手 | 追 | 追込み(他力) | 自力選手を後方の選手から守る。 |
残り半周くらいまではラインを組んで一番強いラインが有利なポジションをキープして、最後の直線になってからそのライン内で1着をとりあうというレース展開が一般的です。
ラインは競馬や競艇にはない考え方なので、競輪ならではの面白さですね。
個人力が高い選手がチームを組んだらもちろん強いラインになりますが、個人力はそこそこでも高いチームワークで強いラインを作る選手たちもいます。

ラインの攻防は聴きながらの方が理解しやすいからね。

ガールズケイリンも人気上昇中
「ガールズケイリン」とは、1964年から開催された女子選手のみの競輪のレースのことです。
競輪では、男女の混合戦は存在せずに、「通常の競輪は男子選手のみ」「ガールズケイリンは女子選手のみ」の出走となっています。
ガールズケイリンは通常の競輪とレーサーもルールも異なるのですが、ガールズケイリンの一番の特徴は「7選手の競争でラインがないこと」です。

弟の言う通り、ガールズケイリンでは完全に個人戦の勝負になります。
つまり、一番強い選手が勝ちやすい(レース展開を予想するのが簡単)ということですね。
また、他の選手を妨害するような戦術も男子競輪(通常の競輪)ではアリなのですが、ガールズケイリンではNGです。
「男子競輪は勝負、ガールズケイリンはスポーツ」というイメージでOKです。
ガールズケイリンは「顔より太もも。」のキャッチコピーで親しまれています。
- 女性が走っていて華やか
- 7人だけなので的中しやすい
- ラインや妨害といった複雑さがない
- 早く走るだけのシンプルなゲーム
といった特徴があります。
人気も高まっていますが、通常の男子競輪とはまったく別の競技ですね。
予想のコツも違うので、初心者の方が男子競輪とガールズケイリンを両方やるというのはおすすめしません。
最初は通常の男子競輪から慣れていって、その後に好みであればガールズケイリンも楽しむという方針がおすすめです。


競輪のレースの流れ
競輪のレースの流れを簡単にまとめると、
- 脚見せでラインを観客に見せる
- 横並びで一斉にスタート
- 先頭員が選手を引き連れて走る
- 打鐘(ジャン)が鳴り先頭員がバンクから外れる
- 残り1周半で選手たちがラストスパート
といった流れになります。
脚見せというのは、レース開始前に選手たちがバンクを走り、観客にラインや並びを見せることです。
私たち観客は、この脚見せをみてラインを確認し、どのラインが一番強そうかを考えながらレース展開を予想します。

レースが始まると、競輪選手たちはゆっくりとスタートして、先頭員の後ろで走り始めます。
先頭員というのは、レースに参加している選手ではなく、レースが公平になるように手配された運営スタッフのことです。
先頭員は、風の抵抗を受けながらレース中盤まで選手たちの先頭を走って、選手たちを風から守ります。
このため、9車立てのレースであれば、レース中盤まで先頭員1人と選手9人の合計10人がバンクを走っています。

そして、ジャンと呼ばれる鐘の音が鳴るタイミングで先頭員がバンクから離れ、選手たちのラストスパートが始まります。
ジャンが鳴るタイミングを予測して、後方から前方に仕掛ける選手もいますし、ここからが熱いレース展開になります。
レーサーのトップスピードは時速70kmにもなるので、大迫力のレースを楽しむことができますよ。
レースによって何周するかは違うのですが、だいたい3分半という短時間でレースは決着します。

脚見せでラインをチェック
「脚見せ」では、次のレースに出走する選手が、ラインを形成してバンクを周回します。
ラインは競輪予想では必要不可欠な要素なので、必ずチェックするようにしましょう。
また、脚見せのタイミングを見逃したとしても、競輪場や場外車券場のモニターにはラインの構成が表示されます(写真の赤枠で囲った部分)。
なので、焦らずにモニターをチェックすれば、ラインの構成を確認することができます。

写真の赤枠部分を見ると、このレースでは、
- 1番と6番の選手がチームを組む
- 3番と7番と4番がチームを組む
- 8番と5番がチームを組む
- 9番と2番がチームを組む
ということが分かりますね。
競輪の脚見せは、競馬のパドックや競艇のスタート展示のようなもので、人によっては「顔見せ」「地乗り」と呼んだりもします。
慣れてくると、ラインを見ただけで、「今回のラインは想定通りだな(無難なレース展開になりそう)」ということも予想できるようになります。
逆に、「◯◯選手が△△選手とラインを組むのか?!(このレースが荒れるかもしれないぞ)」というケースもあり、こういった時は高配当の結果になりやすいです。
でも、5回10回と競輪経験を積んでいくと、自然に上達していきますよ。

横並びで一斉にスタート
車券の投票が締め切られると発走機という器具にレーサーの後輪が固定され、スターターの号砲に合わせて、全選手が一斉にスタートします。
競輪では、競艇のようにスタートダッシュで勝負が決まる訳ではないので、スタート直後に前にいることは勝敗とほとんど関係ありません。
競輪の選手は、「勢いよくスタートすること」よりも「スタート後に戦いやすい位置をとること」を重視しています。

スタート直後はバンクの内周に沿って各選手が一列で走るのですが、この列の中の前方・中間・後方の位置にそれぞれメリットデメリットがあるんですね。
「前を走っているから有利」ということはなく、選手ごとに自分のスタイルにあった位置どりをするということです。

先頭員が選手を引き連れて走る
写真の赤枠で囲っているのが、先ほども説明した「先頭員」です。
選手を風圧から守るために先頭を走る係員のことで、「先頭誘導員」「誘導員」と呼ばれたりもします。
スタート直後から残り2周になるくらいまで先頭を走り、審判からの指示があったタイミングでコースから退避します。
先頭員が退避するタイミングを見計らってラストスパートをかけてくる選手もいるので、そこから本格的に選手たちの勝負が始まります。
このように、競輪は後半に面白みが詰まっているんです。
ラストスパートは全選手のもがき合いになるんですね。

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何周したらゴール?
何周したらゴールなのかは、レースの種類と競輪場のバンクの長さによって変わってきます。
種類については、下の表にまとめました。
レースの種類 | 競走距離 | バンクの長さと周回数 |
---|---|---|
通常のレース | 約2,000m | 400m→5周 333m→6周 500m→4周 |
チャレンジレース ミッドナイト ガールズケイリン | 約1,600m | 400m→4周 333m→5周 500m→3周 |
出走表にその競輪場のバンクの長さとレースごとの競走距離が書かれているので、レースを見る前にチェックしておきましょう。
ちなみに、「チャレンジレース」は新人選手だけのレース、「ミッドナイト」は21時から開催される深夜帯のレース、「ガールズケイリン」は女子選手だけのレースのことです。
走る距離が変わると予想方法も変わるので、まずは通常の2000mのレースを軸に予想していくことがおすすめです。

打鐘(ジャン)が鳴ってからラストスパート
ゴールまで残り1周半くらいになると、「打鐘(ジャン)」と呼ばれるベルが鳴らされます。
打鐘が鳴るとレースがラストスパートに入り、各ラインは有利な位置を取るためににスピードを上げます。
そして、最後の直線では、ライン内の各選手が1着を獲るために時速70kmに及ぶ猛スピードで駆け抜けます。
このように、
- 序盤(スタート〜打鐘が鳴るまで):各ラインが戦略を練ってさぐり合う
- 中盤(打鐘が鳴る〜ラスト半周):ライン同士のチーム戦になる
- 終盤(ラスト半周〜ゴール):全員が上位を目指して個人戦になる
と考えておけばOKです。
慣れないうちは、実況解説を聴きながらラストスパートを見ていると、終盤の戦いを理解できるようになります。

バンクの名称
競輪のバンク(競走路)は、基本的には上の図のような作りになっています。
レーサーがスピードを出しても大丈夫なように、コースはすり内側が低くて外側が高く傾いています(鉢状になっています)。
1周の長さやコースの傾きなどは競輪場ごとに違っていて、選手ごとに得意苦手があるので、慣れてくると競輪場(バンク)も予想材料になります。

ホームストレッチライン
「ホームストレッチライン」とは、「発走線」「決勝線」とも呼ばれる、スタート兼ゴールラインのことです。
また、ホームストレッチラインがある側の直線を「ホームストレート」と呼びます。
バックストレッチライン
ホームストレートの反対側の直線を「バックストレッチ」と呼びます。
また、バックストレッチ上で、ホームストレッチラインから半周の場所に引いてある線を「バックストレッチライン」と呼びます。
最後の半周(最後の周回でバックストレッチラインからのラストスパート)は、白熱したレース展開で目が離せません。
内圏線、外帯線、イエローライン
コースに沿って引かれている線は、内側から「内圏線」「外帯線」「イエローライン」と呼びます。
外帯線の内側を前走する選手を内側から追い抜くと、「内側追い抜き」という違反行為になってしまいます。
また、先頭を走る選手がイエローラインの外側を一定時間走るのも違反行為になる場合があります。
そのため、選手は基本的に内圏線とイエローラインの間を走ることになります。
退避路
内帯線の内側の平坦な茶色い部分を「退避路」と呼びます。
主に、レース前半で先頭を走っていた先頭員が退避する際に使われます。
20m線、30m線
ホームストレッチラインの30m手前に引かれている線を「30m線」と呼び、25m進んだ場所に引かれている線を「25m」線と呼びます。
スタートの合図から25m線に到達する前に不正があった場合は、レースは仕切り直しとなります。
また、最終周回で30m線を越えた後に落車した場合は、レーサーを担いだり手で押したりしてゴールしても完走とみなされます。

道路の線と同じで慣れたら自然と分かるからね。

競輪のルール
競輪では、レーサーに生身の選手が乗って時速70kmに及ぶ猛スピードで競走をしています。
危険な走り方をすると、自分はもちろん、周りの選手にも怪我をさせてしまう危険性があるんですね。
そのため、危険走行をした選手には厳しいペナルティが課せられることになります。
違反と失格とペナルティ
レースのルール違反となる主な行為を下の表にまとめました。
名称 | 内容 |
---|---|
斜行 | 斜めに走って他の選手の進路を妨害する |
押圧 | 他の選手をコースの内側に押し込む |
押し上げ | 他の選手をコースの外側に押し上げる |
内側追い抜き | 外帯線の内側を前走する選手を内側から追い抜く |
敢闘の義務 | 暴走や過度の牽制などで自身の勝利を諦めた走り方をする |
先頭員早期追い抜き | 先頭員を決められたタイミングよりも早く追い抜く |
違反をした選手にはペナルティとして「失格」「重大走行注意(重注)」「走行注意(走注)」のいずれかが科せられます。
失格になってしまうと「即日契約解除」となり、その開催期間の翌日以降のレースに出場することができなくなります。
内側追い抜き禁止
当然、コースを周回する競技なので、内側を走ったほうが走る距離が短くなって有利になります。
しかし、前の選手を抜くためにどんどん内側に入ってしまうのでは、レースが成立しなくなりますよね。
そこで「外帯線の内側を前走する選手を内側から追い抜いてはいけない」というルールが作られました。

このルールがあることで、
- 先行選手は風の抵抗をうけながら持久力で戦う
- 追込み選手は大回りをするダッシュ力で戦う
というように、競技のバランスがとれるんです。

落車してもレースは続く
落車しても選手にレースを続ける意思があれば、再びレーサーに乗ってゴールを目指すことができます。
また、最終周回で30m線を越えた後に落車した場合は、レーサーを担いだり手で押したりしてゴールしても完走とみなされます。

選手は完走することで着順に応じた賞金を受け取ることができるので、1円でも多く給料をもらうため、最後まで諦めずに走るんですね。
逆に、レースを続けることが難しい場合は、棄権扱いとなり賞金を受け取ることができなくなってしまいます。

違反や失格になったときの車券はどうなる?
競輪では、違反や失格になった選手の車券を買っていたとしても、お金が返還されることはありません。
車券が返還されるのは、レースが中止になったり、選手がスタート前に欠場になった場合だけと決められています。
選手に期待してお金を払う側としては、もう少し柔軟な対応をしてもらいたいところですが、現状ではどうしようもありません。

【競輪のレースの流れとルール】まとめ
競輪のレースの流れやルールについて、ポイントをまとめると、
- レースの中盤までがラインごとのチーム戦で、終盤は全員敵の個人戦!
- 先頭員が退避してからのラストスパートが熱い!
- ガールズケイリンなどの1600mではなく、通常の2000mで予想に慣れよう!
- 違反や失格になるような選手の車券は買わない!
の4つがポイントです。
競輪のレースの一番の特徴は、同じ地区や隣接地区の選手同士で組まれる「ライン」の存在です。
それぞれの選手は速く走れるように体を鍛えるのはもちろん、チームで協力して戦略的に戦う頭脳戦も重要になってきます。
「チーム戦と個人戦」「体と頭」といった一見して真逆の要素が1つのレースのなかに収まっているのが、競輪の最大の魅力ですね。

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